もし、あなたの国の「法律」がこうだったら?

この地域に住んではいけないと家を追い出される
あなたの職業は単純労働に限定される
水準の低い教育しか受けられず進学はできない
駅、公園、トイレ、映画館、郵便局窓口や公共交通機関など、あらゆる公共施設の利用は分離される
異なる人種との結婚は禁止される
あなたには投票権がない

違反すれば逮捕されるとしたら?



先日、こんな冒頭の質問からスタートして講演する機会があった。
都内の中学三年生に向けたもので、テーマは南アフリカのアパルトヘイト、作家ベッシー・ヘッドと文学作品の役割、雨雲出版を作って『雨雲の集まるとき』を翻訳出版すること。

それに、現代社会への問いかけと読書が与えてくれるものについてを話した。

今、中学校三年生はちょうど受験が終わるシーズン。
まだ少し受験が残っている人もいるようだったが、ほとんどの生徒が高校生活に向け気持ちを新たに未来を楽しみにしているだろう時期だ。

図書館担当の先生が『雨雲の集まるとき』や雨雲出版の経緯を気に入ってくださり、二回の講演機会が実現した。
事前にお伺いしたところ、生徒には、わたしのキャリアの面も話してほしいとのことだった。

行き当たりばったりの道で生きてきた自分だけれど、共有できることも何かしらあるだろうと思いお話しをした。それは、自分自身にとっても気持ちをフレッシュにさせてくれる機会となった。

情報があふれる現代社会の中で、解像度を上げることを大切にしてほしいと思う。
最初から物事の答えを求めないで深い思考を身につける。

人生における選択肢を与えてくれるのは、たまたま読んだ本だったりするものだ。

そして、アパルトヘイトを遠い国の過去の出来事と考えてほしくない。



差別とは何かを考えてみる
■マジョリティ(多数派)がマイノリティ(少数派)に対してするもの?
■法律はいつも正しい?
 → 歴史の中で、間違った法律はなかっただろうか。
■民主主義とは何か?多数決は万能なのか?
この問いについては、考え続けてほしいと思っている。
もちろん、中学生だけでなくあらゆる人々に。

今、聞こえてくる排外主義の声は、「外国人」とひとくくりにした非常に短絡的な分断の考え方で、これはまさにアパルトヘイトを形作っていったものに他ならない。

アパルトヘイトは、分離発展などとうたい、差別構造を法制化していった。
多くの人の人権が奪われ、命も失われた。

排除することは、やがて自分自身が排除されることにもつながるものだ。

中学三年生で、南アフリカの歴史から現代社会に通じる差別のお話まで、とても濃い内容となってしまったけれど、すぐにピンと来なくとも、何年後に思い出すのでもいい。

今、このような世の中に突入し、まるでディストピアのような過去の血塗られた歴史を繰り返しかねない考え方が、政府から聞こえてくるあり得ない事態となった。

若い世代が、世界を知り、思考の枠を広げ、物事への解像度をあげて流されない心を持ってくれることを願っている。

20260217_034728621_iOS

図書室の先生が用意してくださった南アフリカ関係の蔵書。反アパルトヘイト闘争時の貴重な本もある。

エッセイ100本プロジェクト(2023年9月start)
【76/100本】