自分で手売りすればいいんですよ。
あるひとのその言葉からすべてが始まったのが2023年。
文学フリマへの出店申し込みフォームに屋号を書く欄があり、2秒で考えた「雨雲出版」という名を冠し出版レーベルとしてスタートした。
自らのベッシー・ヘッドに関する記録を書いたエッセイを売ることでベッシー・ヘッドを知ってもらうために文学フリマに何度も参加し、2025年5月、ついに足掛け30年弱の時間をかけて1968年の作品『雨雲の集まるとき』を自らの翻訳で出版。
2025年8月24日には、文学フリマ東京に続き、出版後2回目のイベント文学フリマ札幌10に出店した。
イベント出店では、雨雲出版から直接お買い上げくださる皆さまに、特典冊子を差し上げている。
これは、ベッシー・ヘッドの素晴らしい言葉たちの中でも出版されていないものが多く手紙に残されているので、その一部だけでも読者の方のシェアさせていただき、魅力を感じてもらいたいということから作ったものだ。
そして、雨雲出版オンラインストアから購入いただくと送料がかかってしまうため、それでも雨雲出版から買ってくださったお礼として用意したものである。
("Some Quotes from Her Letters" Bessie Head X Paddy Kitchen 英国の作家パディ・キッチンに宛てたベッシー・ヘッドの手紙の一部です)

そして、もう一つ。
今回の文学フリマ札幌で初めてお持ちしたもの。
それがもう一つの特典冊子である。

「冊子『雨雲の集まるとき』を知る:アパルトヘイトとベッシー・ヘッドの世界」
(1968年発表の『雨雲の集まるとき』(2025年6月邦訳出版)の時代背景や作家ベッシー・ヘッドを理解するための日本語読者に向けた副読本)
詳細記事はこちら
詳細記事はこちら
以前書いた通り、『雨雲の集まるとき』を読んでいただくにあたり、日本語読者様に知っておいていただきたい最低限のことを書いた。
それが、この物語の見えない土台となっているアパルトヘイト、ひいては人種主義や差別のことである。
そして、主人公の青年マカヤが見てきた世界のことだ。
未だ、差別や排外主義が蔓延る現代社会、そしてひいてはそれが戦争や虐殺につながる。
単に物語の良さではなく、この重要な存在意義を深く知ってほしいからだ。それが私の仕事だと思っている。
以前、「文学ラジオ空飛び猫たち」に出演させてもらったとき、ホストのミエさんが「マカヤの前日譚を知りたい」とコメントされていた。
主人公マカヤは元ジャーナリストで政治犯として投獄された経験を持ち、政治から離れてボツワナへ亡命しようと国境フェンスを越える。
ここで大切なのは、決してマカヤはベッシー・ヘッドが作り出したまったく新しい突拍子もない人物なのではなく、当時の反アパルトヘイト闘争の中で典型的なひとりの活動家の姿である点だ。
実際、ベッシーはジンバブエから亡命してきたある活動家の青年が政治からいっとき身を引くと話していたのをもとに、青年マカヤのイメージを描いている。
南アフリカで投獄され、拷問を受けて命を落とした活動家、暗殺された活動家は多く、マカヤは幸運にも刑務所を出ることができたひとりに過ぎない。そんな活動家の姿を、ベッシーは作品を通して描いている。つまり、実際にこの作品が描かれた反アパルトヘイト闘争時、リアリティを世界に伝えているのだ。
亡命先ボツワナの村で出会った英国人青年ギルバートに訊かれ、さらりと答えたこのマカヤのセリフには計り知れない重みがある。これについて、どれだけの日本語読者がその闇を感じ取れるだろうか。


マカヤの前日譚とはいかないが、このような典型的な活動家が潜り抜けてきた闘い、そしてアパルトヘイト下の南アフリカ社会がどういうものなのか、物語と絡めて想像するきっかけになるように作ったのがこの冊子だ。

文学フリマ札幌で購入してくださったお客様への配布を始めたばかり。
無料にしたのは、より多くの日本語読者に読んでほしいから。
今後、雨雲出版からご購入のお客様には差し上げる予定。
(ご希望の書店様には印刷版を無料で差し上げます。ご連絡を)
なので無料でPDF版がダウンロードできるようにもした。↓こちらから
ベッシー・ヘッドの『雨雲の集まるとき』を出版するために気の遠くなるような年月を諦めずにやってきたのは、この物語を多くの日本語読者にお届けする使命があると思ったから。
そして、文学フリマのようなイベントで、色んな方にお会いしてお話している。
文学フリマ札幌でお話したたくさんのお客様には、このことがどれくらい伝わったのだろうか。
わからないけれど、深い理解に到達するまで時間がかかるかもしれないけれど、わたしはすこしでもこの世界に伝えておくべきメッセージを放つために、こうして雨雲出版という仕事をしている。
ベッシー・ヘッド作品でまだまだ翻訳して出版をしたいものがあるが、それ以外にも、本づくりや人前でのお話をする機会、文章を書く機会を通じて、言葉にしていきたいと思っている。
物語のその先に感じてほしいことがあるから。
文学ラジオ空飛び猫たち出演回↓






(こちらは、丸善ジュンク堂書店 札幌店様)
ちょっと小樽旅行

エッセイ100本プロジェクト(2023年9月start)
【57/100本】
コメント
このブログにコメントするにはログインが必要です。
さんログアウト
この記事には許可ユーザしかコメントができません。