学生時代にアフリカに関わり始めてからいままで、ずいぶん年月が経った。
いつも感じていることだが、アフリカ関係以外の一般のひとと話していて、あからさまにアフリカに対する差別的な発言をされるのは日常茶飯事だ。
アフリカ関係者ならきっと誰しも、そんな場面には数知れず出くわしているだろう。

つい最近も、そういうことがあった。
馴染みの小さなバーのカウンターにいたとき、すぐ横に座った女性が大声で(わたしから見れば)完全NGな発言をしているのが聞こえてしまったのだ。
よくあるアフリカ×「原住民(侮蔑的な意味)」系の発言だったが、発言そのものを取り上げる意味はないので具体的には書かないけれど。
その瞬間は、差別表現を耳にして思わず固まってしまったが、知らない人だったのもあり結局わたしは何も言わなかった。

差別発言について、わたしなりに学んだことがある。
そのような発言をするひとは、多くの場合、意図的で攻撃的な差別意識、つまり悪意があってしているのではない。
そこにあるのは知識や経験の不足。そして想像力の欠如だ。

バーで会ったその女性もまさにこの典型だろう。
具体的な国名まで上げていたが、当然その国に関する知識があるわけではない。
ましてや行ったことがあるはずもないだろう。(わたし、3回行きましたと思わず言いそうになったが)

厄介なのは、それが面白い冗談として笑いを伴って言われていることだ。
発言者自身も、周囲も面白いと思っているらしい状況にあるとき。

もちろんそこには、誰かを貶めているとか攻撃しているという悪意的な発想はない。
でも、悪意がないからといってその発言で誰かを深く傷つけないことにはならないし、許されるわけでもない。


ただ、いったいここでどのような態度を取るのが良いのだろうか。
長い間、数えきれないほどそんな場面を経験しても、これは永遠の課題でもあった。


その場で驚いて完全に固まっているのは自分だけで、差別発言の主も周囲も笑いと捉えているとき。

誤解されがちだが、ここで発言者を責めてもまったく意味はない。
もちろん怒っても何の解決にもならない。

差別発言について、言葉を選びつつ指摘したことも過去になくはなかったが、そういうとき、今度はわたしに対する表面的な謝罪で終わってしまう。
わたしに謝ってほしいわけではないが、そこは日本の謝罪分化。
物事の深い本質はともかく、まず謝ってその場を済ませてしまう、なんてこともよくある。
謝る相手が違うのではないか?


でも、それで終わってしまっては何の意味もない。
言葉狩りをするのでもなく、目くじらを立てるのでもない。

ただ、明らかな差別発言があったときに、やはりそれを指摘するひとがいないと、その人は理解しないままずっと言い続け、いつか取り返しのつかない出来事につながってしまうかもしれない。
そして、その場にいた人も、無意識の暴力性に何も気づかないまま生きてしまうかもしれない。

指摘することでその場の空気に水を差すことは確実だし、嫌な人と思われるリスクもあるだろう。


それでも、アフリカ関係者として、やはりここは問題を指摘する責任はあるのだろうと思う。
これが、二十数年アフリカに関わって来た今のわたしの考えだ。
今まで9割がたは流してしまっていたけれど、つい最近のこの出来事で、やっぱり黙っているのは良くないと思い直した。

では、どのようにすれば角も立たず、かといってきちんと意図を伝えることができるのだろうか。

これは実に高いレベルの会話技術を要することだと思う。
友人らとこの問題について話してみたのだが、結論としては「スナックのママ」になることだろうと意見が一致した。

誰かを責めるのではなく(責めても意味がなく解決にならない)、流すのでもない。

誰かを下げることなく、明るい言葉の言い回しでダメなことはダメだとしっかり伝える。
人生経験も人徳も必要かもしれない。
今のわたしにはまだまだ修行が必要だ。

でも、差別発言を流してしまうことは、やはりもうできない。
黙っていることも、色んな意味で罪深い。

アフリカに関わり始めて四半世紀以上。
そろそろもうワンステップアップして、スナックのママのように、しなやかな会話と瞬発力を習得できるよう、鍛錬していきたい。

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エッセイ100本プロジェクト(2023年9月start)
【22/100本】


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