文章にしてしまうと、そこで事実を認めて何かが定まってしまう気がする。何か書くと、別のものに置き換わってしまいそうだ。

二日前に、とてもショッキングな知らせが目に入ってしまい、そこから心にぽっかり大きな穴があいたように放心状態だ。

敬愛するピアニスト、ゲオルギー・ヘミング・イングリッド・フジコ様が天国に行ってしまった。

いまもうまく言葉にならないのだけれど、こうしてキーボードを叩いている。
フジコ様は、とても長いあいだわたしの心の支えであり、魂に寄り添う音色を奏でてくれるひとだった。
つらいとき、悲しいとき、彼女のピアノしか聞けない日々もあった。
わたしにとって特別だった。

最初に彼女を知ったのは、例のNHKの番組だった。
90年代終わり、年齢60代後半のフジコ様が初めて世間に知られ、大ブレイクのきっかけとなったあの番組だ。

あのときのラ・カンパネラは忘れられない。
何だ、この演奏は!と口をあんぐり開けて、完全に引き込まれてしまったのを覚えている。

ひとつひとつの音に、濃く深い絵の具の色を乗せていくような演奏。

フジコ様をしってからCDを買い集め、2000年のエディンバラ大学留学時にずっと聞いていた。大学院修士課程ではつらいことも多かったけれど、部屋で音色をエンドレスで聴きながらキーボードを打っていた。

絵も、本も、ドキュメンタリ番組も、どれもがわたしにとって大切な宝物で、何度も繰り返し読んだり観たりしてきた。

コンサートには二度行った。

魂の音色には終始涙が止まらなかった。

長い年月、そばにいてくださりありがとう。

これからも、あなたの音と一緒に生きていくんだと思います。

大好きです。大好きです。

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【21/100本】


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