この本と目が合って手に取ったのは何か月か前だったのだが、ようやく読み始めたのは数日前。
表現のトーンが大好きな感じで、興味の尽きない内容に夢中になった。

校正者のご著書を読んだのは初めて。

著者は、図書館司書を経て企業の校正者として10年仕事してから独立されている。
こんなお仕事があるのだな。

面白いのは文章の校正の奥深い世界。
現代日本語は意味が変化していたり、著者の意図があって変わった使い方をされていたり。そのひとつひとつ、まさに「文にあたる」のだ。
校正といっても、書籍はもちろんのこと雑誌や広告まで。何でもある。

あとは、文章に書かれている事実関係を確認する校閲の面白さが際立つ。
興味深い事例や引用文が載っているのでさらに奥深さを感じさせてくれる。

ベッシー・ヘッド作品を翻訳したり、noteで引用を書いたり、ベッシー・ヘッドのマガジンを書く際にも「裏を取る」とか確認をするということは、調べものマニアのわたしとしてはかなりやってきたし、開発コンサルタントの仕事も、報告書を作成するときは校正・校閲を自らやったり、チーム内でやったり、社内でやったりして品質を高める。

ときに気が遠くなるような作業だけれど、この沼感覚がわたしは意外と好きなんだと思う。
(そんなひとは翻訳に向いてるかな?)文章を仕上げるのは好きなのだ。つらいけど。楽しい。


著者は、専属の校正部署を構えている出版社は限定的である点を指摘しているが、確かに校正校閲をどれだけ入れたのか、これはちょっと、という間違いを書籍に見つけてしまうことはけっこうある。
ああ…と何だか自分がやらかしてしまったように溜息が出たり。

そういえば、某新聞社のウェブ版でムガベとムベキを入れ替えちゃっていたのは衝撃だったな。

仕事の報告書でも、どんなに頑張っても印刷後にミスが見つかってしまうと、モグラのように穴を掘ってから穴にも入れずやっぱり逃げ出したくなる。

でも、こんなに大切な仕事で文章のひとつひとつに愛情を注ぐ(たぶん)のは、素敵な仕事だな。
わたしの本も出せたら、すてきな校正者のひとに校正してもらって、早く「ああ〜っ…」ってなりたい。


校正者にとっては百冊のうちの一冊でも、読者にとっては人生で唯一の一冊になるかもしれない。誰かにとっては無数の本の中の一冊に過ぎないとしても、別の誰かにとっては、かけがえのない一冊なのだ。
余談だが、この本には行きつけの「パン屋の本屋」さんで出会った。
一目で気に入ったのですっと会計に持っていくと、いつもお世話になっている店主が、「わ〜、うれしいです。ありがとうございます」と喜んでくださった。店主にとっても、自分が気に入って並べた本だったらしい。

読んでみて素晴らしい本だった。
そんな本を選んで仕入れる店主もセンス抜群だし、それをすっとピックアップするわたしもセンス抜群と言いたい。

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文にあたる
牟田 都子
亜紀書房
2022-08-10



南アフリカの作家ベッシー・ヘッド(1937-1986)の紹介をライフワークとしています。
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