先日、久しぶりに馴染みの美容師さんにカラーリングをお願いしながら、何故わたしはアフリカに関わるようになったかを話す機会があった。

もちろんアフリカに関わる直接のきっかけは、大学の時にアフリカのことなんて全く知らないままにアフリカ研究のゼミを選択したことだ。
でも、彼女が突っ込んだ質問をしてくれたことで、何となく記憶の奥底に沈んでいるさらに源みたいなものに触れることとなった。

すっかり忘れていたのだが、多分最初に南アフリカに触れたのは高校の時に観た『サラフィナ!』という映画だと思う。

わたしの通った高校は、港区のいわゆるお嬢様学校と呼ばれておかしくないような学校だった。
帰国子女枠で合格することができ、中高一貫校の高校から入学した。

国際社会で通用する人材を育成することに力を入れていたのだろう。
高校では色々な経験をさせてもらったが、その中で覚えているのが一年に一度の(だったと思う)「映画の日」だ。

学校には立派なホールがあって、確か例年は映画を借りてきてそこで上映していた。
でも、高校何年生の時だか忘れてしまったけれど、その年だけは何らかの事情があったのだろう。

学年ごとだか忘れたけれど(学年でも250名いたから相当な人数だが)、例外的に全員でわざわざ渋谷の映画館まで行った年があった。

その時に観た映画が『サラフィナ!』だったと思う。

『サラフィナ!』は、1992年に公開されたミュージカル映画で、アパルトヘイト期の南アフリカで1976年に実際に起きたソウェト蜂起をモデルにした映画だ。

舞台は1980年代という設定だ。
ソウェトの高校でネルソン・マンデラをテーマにしたミュージカル劇をやろうとしていた高校生たちと、真実を伝えようとする教師メアリー・マソンブカ(ウーピー・ゴールドバーグ)は、当局に目をつけられており……。
一人の少女サラフィナの視点で語られるリアルな展開に、心が苦しくなったり怒りを覚えたりする。

蜂起した学生たちに当局が発砲し撃ち殺されたり逮捕されて拷問を受ける生々しいシーンも、実際に起きたことだ。


映像のインパクトは絶大だ。

高校生だったわたしの脳裏に焼きついた悲惨なシーン、信念を曲げずに逮捕され殺されていくシーン、怒りと憎しみ。
対照的に陽気なメロディとリズムの南アフリカの音楽とダンス。

ソウェトの風景、生活の空気感。


こういうものが、無意識のうちに高校生だったわたしの中に根付いていたのだろうと、長い年月が経った今改めて気づく。



きっと当時、わたしの学校の先生たちは、この映画をわたしたちにどうしても観せたかったのだろう。
1992年に出た映画は新しくて借りることができなかったのかと想像するが、だからわざわざ何百人も連れて映画館を貸し切るなんて、今になって思えば結構な熱意だ。

時代的に90年代の前半。
ちょうどアパルトヘイトが終焉を迎えて、全人種参加の選挙が開催される直前の歴史的な時だった。この映画に出てくる子たちと同じ高校生だったわたしたちに、先生はこの映画を観せることが大切だと思ったのだろう。


その後わたしは大学に入ってアフリカ研究のゼミをとり、南アフリカに漠然とした興味を持っていて、偶然目にした本で南アフリカの作家ベッシー・ヘッドと出会う。

それがわたしのライフワークになり、1998年の大学4年生の時には本当に自分が南アフリカに行くなんて、高校時代はもちろん夢にも思っていなかった。

まさにアパルトヘイト時代を「カラード」として生き、ジャーナリストとして政治に関わりボツワナに亡命したベッシー・ヘッドが描く世界は、このサラフィナの世界に通じる。

ベッシーが描いたのは、単にアパルトヘイトで流された血と戦いの話ではない。

人間の心の中に住む善と悪。
どの人間にも、苦しみと悲しみがあり、どの世界にも差別と偏見があり搾取がある。
そういう人間社会の根源的なことなのだ。


そしてそれは、現代社会にも伝えなくてはならないメッセージに溢れている。
もちろん、この日本でも差別と偏見、無知と無関心の罪はある。

だからこそ、わたしはこの作家のことを今でも追いかけているし、差別と偏見、無知と無関心についてどうしても伝えたいのだと思う。

==

自分でも気づかないほど意識の奥底に仕舞い込まれていたけれど、実は自分の人生を大きく左右する軸みたいなものの源だった。
誰かとの会話をきっかけとして、自らそういうことに気づく。

この『サラフィナ!』が心の中にあり、今でも同じテーマを追いかけているわたしのような人がいることを、当時これをちょっと無理して見せてくれた先生方が知ったら喜んでくれるだろうか。

なんてことを30年近く経った今、改めて思うのだった。


もちろん、学費も高かったろうと思うが、この高校に通わせてくれた両親にはとても感謝している。



もし、アフリカ関係者(特に若い方)で『サラフィナ!』を知らないという方がいたら、ぜひ観てほしい。もちろんアフリカ関係者でなくても。






646385CA-6EFF-4C7F-8D09-17899D21659F


↓これは多分、1998年大学4年生の時に初めて行った時に撮ったヨハネスブルグの写真。フィルムのカメラ!
IMG_2104




南アフリカの作家ベッシー・ヘッド(1937-1986)の紹介をライフワークとしています。
(詳しくはこちら)

■作品の翻訳出版に向けて奔走しています。
■作家ベッシー・ヘッドについてnoteで発信しています。
note「ベッシー・ヘッドとアフリカと」
note「雨雲のタイプライター|ベッシー・ヘッドの言葉たち」

==
■ Amelia Oriental Dance (Facebookpage)
■ 『心と身体を温めるリラックス・ベリーダンス』
■ Rupurara Moonアフリカンビーズ&クラフト
 Rupurara Moon African Beads & Crafts
 



↓更新通知が届きます


にほんブログ村 海外生活ブログ アフリカ情報へ にほんブログ村 演劇・ダンスブログ ベリーダンスへ