北マケドニアである人と交わした噛み合わない会話について、まだどこにも書いていない。
むしろいちばん大切なことは実は書かないことが多いのだけれど、北マケドニアのことについては嫌な気持ちが先行してしまい書こうとも思っていなかった。

でも、心の中に割り切れない苦いものを呼び起こすようなその会話について、うまく文章化できるとは思えないけれど、うまくなくてもかまわないから書いておいた方が良いのではと思えたのだ。

思いは、スコピエという街とどうしてもリンクしてしまうから、それ抜きにスコピエについて書くことは難しい。


5月15日、オールドタウンを楽しんで良き時間を過ごしたサラエボを出て、わざわざ飛行機でイスタンブール経由で北マケドニアのサラエボへ。
この辺りは隣国とはいえ空路で行こうとすると大変に不便である。

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北マケドニアもまた旧ユーゴスラビア連邦を構成していた国のひとつ。

マケドニア人とはいうものの彼らはギリシア系ではなく南スラブ系で、言語もセルビアなどと非常に近くほぼ相互理解ができるレベル。そのこともあり、マケドニアという国の名称は紛らわしいとの抗議から2020年に「北マケドニア」という名称になった。

人口の約64%はマケドニア人、約25%はアルバニア人で構成される。

アルバニア語は、言語形態も全く違う。
アルバニア系はムスリムが多く、次いでアルバニア正教の人が多いそうだ。マケドニア人とは宗教的にも違う。



北マケドニアでは、仕事先のパートナー(カウンターパート)は英語での会話はもちろんOKなのだが、それ以外の関係者とのやり取りのために通訳者がどうしても必要となった。

そこで、急遽お願いした通訳者が、アルバニア系の同年代の男性だった。
彼は、アルバニア語を母語とするがマケドニア語も通訳OKだ。


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いつもおちゃらけているかのような人だが、仕事はきっちりするベテランのプロフェショナル。
通訳の場面はもちろん、あれこれアシスタント的に助けてくれたし、非常に親切にしてくれた。
会話では頻繁に面白おかしく冗談を言って皆を笑わせるトークが上手なムードメイカーだった。

その時も、わたしのアシスタントとして急遽お願いしたにもかかわらず良い仕事をしてくれ、空き時間にはスコピエのオールドタウンの散策まで付き合ってくれた。

サラエボにも似ているオールドタウンは、どちらかというとアルバニア系の人が多く、モスクもあって何となくトルコっぽい雰囲気を醸し出している風情ある場所だ。


オールドタウンのレストランでトルコのケバブ風の食事をしているときのことだった。

どうしてその話になったのかは覚えていないけれど、彼が自分はフェミニズムをサポートすると明言した。

よくよく話を聞いてみると、どうも彼がいうフェミニズムというのは政治的場面における女性の参画促進のことを指すらしかった。

いや、フェミニズムってそういうことじゃないでしょ。

個人個人の女性の生き方についても、家庭の中でも社会生活の中でも、理不尽な不利益や苦しみを被っている人がいるのならば、それもまたフェミニズムが切り込んでいく範疇ですよ。
社会は個人で成り立っているもの。

そういうと、実に激しく否定されてしまった。

彼によると、フェミニズムは政治参画のこと一択。
個人や家庭は関係がないそうだ。

そう言って、彼は自分自身のことを強調し始めた。

彼の妻は専業主婦で、彼は一切家事をやらないのだとか。
妻はその生き方を「選択した」と。
まるで家事をしないことを自慢げに語る様子に、正直とても不快感を覚えた。

奥さんがお料理作れない時はどうするの?
あなた、生きていくのに食事するでしょ?

そう指摘すると、そんなこともわからないのかとでも言いたげに「外食するに決まっている」とのこと。

うむ。

特別な事情があるわけでもなく、生きていくためにご飯すら作れない=自分自身の面倒を見られない大人なんて、恥ずかしいなぁ。
それに、もし奥さんが病気なのだったら、まさか一緒に外食に行くわけじゃないよね?
つまりあなたが言ってるのは「自分の食事」のことでしょ?奥さんの食事はどうなるん?
とは思ったけれど、もちろん彼には通じないだろうな。(ここまでは言わなかったけど)

料理はできない、なぜ自分がコンフォートゾーンを抜けなきゃいけないのだ!とまで言っていたもの。
やれやれ。


彼の家庭がどうであろうと、わたしには関係のない話だけれど、それを正しいこととしてことさら強く主張するその勢いに、正直強い不快感を覚えてしまった。

彼が、フェミニズムに味方すると主張すればするほど、それと相反する物事の考え方がどんどん浮き彫りになっていく。

彼にとっては、妻がそのような人生を送ることこそが、「愛」でありRelationshipなのだそうだ。
それを何度も何度も強調する。

さらに、結婚していないわたしに対して憐れむようなことを言い始めた。

わたしは結婚していないので、彼曰く「愛もRelationshipもわからない」のだそうだ。
それを何度も言われて、いい気分でいられる人って果たしているだろうか。
「早く誰かを見つけられればいいのに。そうしたら、君にもわかるはずなのに」と繰り返す。

わたしは彼と同世代の40代半ばだ。
長く結婚をしてきたそのアルバニア系通訳アシスタントとはずいぶん違う生き方をしている。

一週間ずっと通訳アシスタントとしてついてもらっていたのだが、長時間過ごす中でことあるごとに結婚のことをとやかく言い、街を歩けばどこかのショーウィンドウでウェディングドレスが飾られているのを見るたび毎回のように指差しては、ほらほら、これ必要でしょ、などと言ってくる。(本当に毎回)

正直、不愉快だった。


他人の人生について、一体何をわかっているというのだろう。

わたしがこれまでの人生で、どんな人と出会い、どんな関係性を築いて生きてきたか。
どんなふうに死ぬほど苦しみ、どんな風にこの上なく素晴らしいことや幸せなことがたくさんあったのか。

そんなことをもちろん何ひとつ知らないまま、結婚という社会制度に乗っていないわたしの人生を否定するようなことを言われ続けたようで、心の底から嫌だった。


もちろん、結婚をしていないひとなんてわたしの周囲にもとても多い。

でも、当然だけれど、彼ら彼女らが結婚をしていないからといって、その人の生き方を否定するようなことは、思うわけがない。
100人いれば100通りの人生があり、考え方や経験があり、事情もあるのだ。
それを何も知らずに、どうしてそんなことが言えるのだろう。


これは何も彼だけがこうなのではなく、残念だけれど日本でも海外でも、似たような考えの人に出くわすことは少なくない。

結婚という社会制度をどうしてよく知らない他人の人格や人生への批判に結びつけられるのか、全くわからないけれど、要はそんなことを平気で言って退けるひとは他人への想像力がないひとということなのだろうか。

でも、そういうひとを見ていると何となく思うのだ。

自分の価値観を他人に押し付けて、他者の価値観を尊重できないひとは、もしかしたらその自分の価値観が正しいことをどうしても証明したいという、心の揺らぎがあるのではないかと。
つまり、これでいいと心底100%思って満たされて幸せに生きているひとならば、他者に対してそんな考えを持たないのではないか。

例外はあるかもしれないが、わたしの中での仮説。



結局、その人とは一週間、仕事関係の仲間も交えて冗談を言い合い、仕事はしっかり真面目にこなして過ごした。
でも、どんなに面白おかしく笑い合っても、わたしは自分の生き方を否定する考えを持って譲らない彼と、最後まで心のモヤモヤなしに向き合うことができなかった。

仕事仲間だから人生のお友だちになる必要はもちろんないのだけれど、やはり気分は悪いものである。


わたしは、自分自身がどんな人と(恋愛であれ、そうでない大切な関係であれ)関係性を築いてきたかについて、誰にでも何でも話す訳はないし、むしろ当たり前だけど本当に誰にも話していないことだってある。

でも、これまでの人生で経てきた(恋愛であれ、そうでない関係であれ)愛とRelationshipについては大切なものだと思っているし、今のわたしを形作ってきたものでもある。

そして、これからもわたしは愛とRelationshipを大いに築いていきたいと思っている。

少なくとも、他人には自分の人生についてとやかく言われたいわけがないので、そういうそぶりを見せる方は今後の人生の時間を付き合うのにご遠慮させていただきたいと考えている。

仕事でも、そうでなくても。


現場からは以上です。


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↑そいつが撮った写真(笑)

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南アフリカの作家ベッシー・ヘッド(1937-1986)の紹介をライフワークとしています。
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