カツ丼とは凹んだ心を膨らませる食べ物だと思う。丼ものというのはすでにそれ自体、どんぶりの中だけで世界が完結している芸術的で実用的かつ文化的な食べものだと思うが、そんな天才的発明であるどんぶり界のなかでも、とりわけカツ丼というものは手間数の多い、群を抜いて総合的な食べものなのではないだろうか。

途上国に出張する機会が多いのだが、実はいつも出発前にチェックインした後、空港のトンカツ屋でカツ丼を食べることにしている。

出張はいつもひと月以上の長期なので、なんとなく気合を入れるための自分のための儀式としてこれをこっそり続けている。

出張に出る前、ひとりで静かにいただくカツ丼に一ヶ月分のエネルギーをもらうのだ。

何となく、ここで思い出すのは吉本ばななさんの『キッチン』だ。遠い昔に読んだあの本のカツ丼のくだりを、いつも静かに思い出す。

いつも、ムスリム人口の多い国に行くからその前に豚を食べておくのだ!などと理由づけをしたりもしていたけれど、本当はこの食べものが静かに何も言わず心を満たしてくれるから、不安を和らげてくれるから、食べるのかもしれない。

そういえばずいぶん前、ムスリムがほとんどのバングラデシュのダッカの出張時のこと。
ハルタル(いわゆるストライキ)で危険もあって外で活動できずにストレスが溜まり、思わず「カツ丼食べたい」とツイートしたところ、それを見た現地でお会いした日本人の方が、日本食レストランに連れて行ってくれた。

カツ丼というのは、物語のある食べものでもあるのだ。

実はこの情勢で色々と大変なことばかりの中、海外出張を予定している。
何とは無しに空港のサイトを見たら、なんと空港のトンカツ屋が休業中と書かれているではないか。

まだ出発3日前で少し早いけれど、今エネルギーが切れかかっていることもあり、静かにこのひとりの儀式を執り行うことにした。

巣鴨の「ときわ食堂」さんは、何というか下町感とカジュアル感の混ざったちょうど良いところだ。気取らないおいしさに、心がほぐれていく。

曇り空が晴れるような気がした。

ありがとう。

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南アフリカの作家ベッシー・ヘッド(1937-1986)の紹介をライフワークとしています。
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