地元や故郷という言葉にしっくりくるような場所・土地が実際にあるひとは、どれくらいいるだろう。
それとも、心の中にあるということでもいい。

何度もあちこちに書いているのだけれど、自分は子どもの頃からあちらこちらの土地で育ち、その後も何度も住む街や国が変わっているため、おそらく多くの人が言う「生まれも育ちも」と呼べるような場所はない。

向田邦子さんも、エッセイの中で鹿児島を「故郷もどき」として旅行している。
彼女の気持ちはわたしもよくわかる。

南アフリカの作家ベッシー・ヘッドは、白人の母親を知ることなく「カラード」の両親に育てられ、孤児となり、その後、南アフリカという国を去りボツワナに亡命する。彼女にも、そういう意味での地元や故郷はない。

ベッシーのもっとも強烈な自伝的小説の印象的な最後のシーンで、主人公エリザベスがベッドに横たわりながら地面を手で触れるところがある。それをベッシーは" it was a gesture of belonging"と表現している。
その土地に属するものの仕草、というわけだ。

この一言が、彼女本人の人生も見事に表していて、この言葉が好きなファンもたくさんいるだろう。


わたし自身のことを思い出してみると、一つところに長く住むたび(長くといってもせいぜい数年)早く何処かへ行かなくては、この場を去らなくては、なんて思う反面、実は心の中ではほんの少しだけ土地に根を張ることへの憧れみたいなものがある。

アフリカで長期滞在したのはジンバブエだけだけれど、あの時も果たしてどれくらいあの国のことを知っていたかと思うと大いにやり残したことがある感じがして少し寂しくなる。

出張で新しいアフリカの国を訪れるたび、ああ、ここで数年暮らしたらどれだけたくさんのことを知ることができるだろうと思いながらひと月余りで去るということを繰り返す。

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では、今暮らしている街はどうだろうか。

わたしは今住んでいるマンションにすでに4年ほど暮らしている(長い方)のだが、でも実はあまりこの街のことを知らないのではないか。そんなことに気づいた。

コロナ禍になって人と会わなくなり、本当に数ヶ月の間、生身の人間と会話することがなくなった。
そしてふと思ったのだ。
わたしはこの街にほぼ知り合いがいない。

あえて言えば、いつもお世話になっている大好きなタイ料理屋さんのママとパパだけだ。

そう考えると、少しの不安も湧き上がる。
震災とか何かあったときに、本当に身近に誰もいないという状態になる。
(実際、東日本大震災のときは前の部屋に住んでいたけれど、誰も会うことがなかった)

そして、コロナの時代になってもそれは同じだった。

今まで、この街に住んでいながら、わたしは常に外に出ていて街のことを見ていなかったのかもしれない。

それに気づいて新しいプロジェクトを10月から始めることにした。

単純なのだけれど、ランチ食べ歩きだ。

3月からずっと在宅勤務になって家に閉じこもっていたけれど、最近はずいぶん外に出るようにしている。
通勤していた頃には平日昼間に街にいることなどなく、昼間の街の表情も知ることがなかったことに気づく。ましてや、平日のランチなんて行くことは皆無だった。

でも、在宅勤務の今、それができるではないか。

そのことに気づいて、なぜそれを早くやらなかったのかしらとさえ思った。

わたしはこの街のことをもっと知りたい。
そして、人と出会いネットワークを少しでも作って今という暮らしをエンジョイしたい。

いずれこの街は去ることにはなるだろうけれど、それでも今を最高に幸せにするためにはやはり街と少しでもつながっておくべきだ。

で、ランチ食べ歩きのために、インスタアカウントを作っちゃいました。



さらに、ブログまで。
こちらの「はじめに」の記事に詳しい背景を書きました。



今、これを初めて20日目くらい。

ほんの少しだけだけれど、街と自分が近づいたようなそんな気もしている。
どんなお店があって、どんな人がいるのかということを少しずつだけど知りつつある。

せっかくこの街にいて、リモートワークで家で仕事をしていてランチにだっていけるんだもの。
まずは、年末まではこれをやってみようとおもっている。

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ところで、リモートワークということで、これを活用して日本の他の地域とも繋がりたいなと思っている。

ということで早速、実は今、新幹線に乗っています。

少しだけ某所に行きます。

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