*7/21の『シークレットガーデン・シアトリカルベリーダンスショー』のステージを彩った数々の物語について書いています*(ステージ写真はフォトグラファーHORIさん)

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■「Lovers in the Garden〜庭園の恋人たち」のステージをつくる


自分でも、自分自身がやれることとして認識していなかった、というのが
わりと正解に近い表現ではないかと思う。

ペアダンスには、バレエ少女だったころから
本当は心の底に強い憧れがあったのかもしれない。


これはもちろん、ゲストダンサーKaQさんが出演してくださり実現したこと。

わたしはアルゼンチンタンゴをもう3年半くらいは習っているんだけれど
ペアダンスはまだまだ修行の入り口に立ったばかりくらいのレベル。

でも、この「シークレットガーデン」で、これはわたしの魂をかけた作品となった。


"Lovers in the Garden"(庭園の恋人たち)というテーマは最初からあったのだけれど、
そのテーマがわたしの心の中で実際の物語と結びつくまでずいぶん時間がかかった。

そして、コンサルお仕事でタンザニアにひと月と少し出張したとき、
ある瞬間すべてが結びついたのだ。

それが、ザンジバルに実在した王女サルメの物語。


オマーン領であったザンジバルは、その昔、奴隷貿易やクローブ等の栽培で栄え、
アラブの街ストーンタウンは今でもその当時のままの姿を保っている。

アラブ、インド、そしてスワヒリ文化の混ざりあった独特な島ザンジバルは、
わたしの二十年来の憧れの場所でもあった。

そこへの訪問が、ほんの一瞬だけだけれど実現したのが今年だった。







■激動の時代を生きたザンジバルの王女サルメの物語との出会い

王女サルメは、サイード王の36人の子ども(正式な子どもの数。実際は百数十人いたそう)の末っ子。
19世紀半ばから20世紀初頭を生きた実在の人物

若き日の彼女はいつも、宮殿の離れの隣で若きドイツ人ビジネスマンが、
ひとを招いてヨーロッパ風の食事会を開くのを窓から眺めていたという。

男性の名は、ルドルフ・ハインリッヒ・リューテ

やがてサルメとルドルフは恋におち、二人はザンジバルを去りドイツへ。

イスラム教からキリスト教へ改宗したサルメはルドルフと結婚し、3人の子に恵まれる。

ところが、ドイツへ移住した3年後、ルドルフは交通事故にあい悲劇の死をとげる。


王女サルメは、当時の英国政府とドイツ政府の覇権争いに巻き込まれ、
ザンジバルに2度戻るものの、すでにキリスト教徒となりドイツに長く身を置いていたことから、
サイード王の後を継いだ兄弟に、ザンジバルでの様々な相続権を否定され、
結局ザンジバルを永遠に去ってしまうことになる。

わたしが思い描いたストーリーは、そんな彼女の哀しみを描いたもの。

■「シークレットガーデン」で描くAmeliaなりのサルメの物語

ここからはわたしのフィクションなのだが、「シークレットガーデン」では
長い時を経てザンジバルに帰ってきたものの、政治的な争いに巻き込まれ
哀しみに暮れるサルメが、愛するひととの思い出あふれる真夜中の「秘密の庭園」へ
舞い戻っていくところを描いている。

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(ヨーロッパから帰ってきたので、旅の装いで始まる)

真夜中の庭園、そんな彼女のもとに現れるのが
亡きルドルフの幻。

二人は再会し、愛を確かめ合う。

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しかし、すでに二人が棲む世界は別の世界


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やがてほんの短い時間の魔法は消え、
サルメは彼に触れることができなくなる。

哀しみの中、二人はまた別々の世界へ引き裂かれる。


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もはや幻の姿も見えなくなってしまい・・・。

幻が消えてしまうと、サルメはまたひとり、ヨーロッパへ戻る旅路につく。

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■そこに生きた証〜王女サルメの面影

これが、実際のサルメ。

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伝統的なアラブの装いをして、特徴あるサンダルを身につけている。


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この左の建物が実際の「窓」


そして、ルドルフ。

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家族の写真。

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すっかりアラブの王女からヨーロッパの夫人になっていったサルメ。

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時代に翻弄され、80代まで生き、1924年にドイツで亡くなった。
今でもドイツのリューテ家のお墓に眠っているそうだ。

ドイツ名は、エミリー・リューテ。


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■一目ぼれした衣装、そして運命的に出会ったペルシア語の曲「Deceit〜偽り」

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この赤い衣装はロシアのPolinaにオーダーしたもの。
ネットで一目ぼれし、彼女の情熱のイメージにぴったりだと思った。
(衣装の名はLOVEだった)

それから、運命的に出会った曲。

イランのミュージシャンHamed Nikpay




彼の歌声は心をつかみ、わたしはいつも本当に涙してしまう。

彼が演奏する楽器は、ペルシアの伝統楽器タール。
そしてこの作品は、チェロの美しい音色の他に
フラメンコギターがヨーロッパの風を運んでいる。
そして、カホンの音が胸に響く。

本当に心に沁みる大切な曲。

歌詞の意味はサルメの物語と違うのだけれど、
切ない思いを歌いあげる。

赤い口紅の色のこと。
(だから唇を触る仕草を入れてみたのでした。えへ)

■新しいスタイルのダンスで表現する可能性

そして、あらかたの振付と展開は、プロフェショナルであるKaQさんが考えてくださり、
わたしはベリーダンス部分を自分なりに表現した。


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さすがのKaQさん。

二人の世界が時を超えて交わり、そして分かれていくところを、
ストーリーとして見事に表現してくれる。

踊り自体は、ほんの少しだけタンゴ風の動きがあるだけで
あとはオリジナル。

こういう形のペアダンスもベリーダンスで表現できるのだなと
改めて多くを勉強させていただく貴重な機会でした。





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王女サルメの生涯については、
富永智津子先生のこちらの記事が詳しい。

帝国と女性―王女サルメの世界から


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