「パッセンジャー(Passengers)」という映画を
もう永遠に繰り返し見ている

時は未来
巨大でラグジュアリーな宇宙船に乗り
120年かけて地球から移住先の「コロニー」へ向かう宇宙船アヴァロン

5000人の乗客は皆、「冬眠ポッド」で眠っている

しかし、そんななか
二人の男女が冬眠から目覚めてしまう

まだ残り90年もあるというのに

・・・というストーリーだ。


この作品の魅力は、
壮大な宇宙と巨大宇宙船の美しさにあると思う

とても綺麗な映像だ


わたしは多分、多くの人とは違う視点で
この映画に惹かれているんだと思う

90年も早く目覚めてしまった二人は
この美しい船の中で一生を過ごさなくてはならなくなる

中には、レストランもあればバーもあり、
プールなどの設備も揃っているが、もちろん
船から降りることはできない

そんな気が遠くなりそうな空気に
実は酔いしれている自分がいる

これだけの空間があって
美しい設備があって
そして、何にも邪魔されない膨大な時間があったら・・・

そう思ってうっとりしている自分は
少し危ういと正直思う

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ジェニファー・ローレンスが演じるオーロラの職業はライターで、
この美しい空間で文章を綴るシーンが出てくる

このたった数十秒のシーンがわたしは好きでたまらない
スクショした

わたしも、この船で過ごせたらいいのにと
なんども夢想した

もちろん、死ぬまでは嫌だけれど
たとえば、1ヶ月でも3ヶ月でも

ここにいてひたすら文章をかけたら
どんなにいいだろうと妄想する

一冊の本を仕上げたり
翻訳を仕上げたりすることもできる

もちろん、ベリーダンスを練習することはできるけど
大勢の前で踊ったりとか仲間と楽しんだり
ということはできないけれど、
もしわたしが宇宙船アヴァロンに乗船したら、
きっとその3ヶ月は書くことに集中するために用意されている

そうすれば、人生の中で大きな宿題として
残っていた翻訳や、叶えたい目標としての
本の執筆などができるではないか
思う存分!

そう考えてぞくぞくするくらいなのだ


それはまるで、
静かな温泉宿に逗留する文豪に少し似ているのかもしれないけど

でもこの宇宙船アヴァロンの完全にロックされてしまう感は
温泉宿をしのぐ
かなり絶大なパワーを持っているだろう



さて、わたしたちの現実世界の地球

いま、世界はウイルスの脅威に晒され、
本当に非常事態に陥ってしまった

そしてわたしは3月初めから在宅勤務となり
もう一月半以上が経った


もちろん、平日日中はフルタイムで仕事をしているけれど
ほとんど人に会うこともなくなり
(ほんっとーうに人と会っていない)
たまの会議以外は誰と会話することもなくなり
自宅でやっと向き合っている

大学生の頃からずっと私の宿題であった
作家ベッシー・ヘッド作品の翻訳に


ここまでベッシーに向き合う日々は
たぶんこの20年でいうと
ボツワナに行ったときと
論文を書いていたとき以外にはなかったと思う


わたしは今、静かに豊かな時間を味わっている

宇宙船アヴァロンほど、
完璧に閉じ込められているわけではないし、
仕事しているから
フルタイムで時間があるわけではないけれど

それでも

いつもどおり通勤していたり、
リハだの自主練だのショーだのイベントだのが
目白押しになって押し寄せていたりすれば
わたしはこの宿題を進めることが
できなかったかもしれない


宇宙船に閉じ込められていてもいなくても
あとどれくらいあるかわからない
わたしの人生は終わる

作家ベッシー・ヘッドは48歳で亡くなった
南アフリカのアパルトヘイトを逃れた彼女は、
ボツワナの孤独な農村で、
宇宙船に閉じ込められたようなひとりの時間が大量にあった

その時の声を、
60年代のボツワナの農村から響く声を
わたしは今
毎晩ひろっている

彼女の思いが、とてもたくさん伝わってくるのを
たったひとりでMac Book Airに向かいながら感じ、
心震わせている


この非常事態の期間がどれくらい続き、
その傷がどれほどのものなのか

世界は変わっていくだろう

でも、
わたしが今生きているこのときを
どれだけ心震わせ生きていくことができるか

それは自分自身にかかっている



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