鏡を覗き込んだら、あまりにもくたびれたひどい顔をしていたので、Microfinance Distance Learning CourseのVideo Sessionもそこそこに、世銀東京ラーニングセンターをあとにした。

20時閉館の図書館分館に間に合ったので、予約していた本を受け取りに行った。

小さな分館で、入り口近くに絵本コーナーがある。
音楽を聴きながら早足で入ると、いきなり正面のラックのこの本と目が合った。


4790251942ヘンリー・ブラウンの誕生日
カディール ネルソン
鈴木出版 2008-12

by G-Tools



思わず、左右を見回して手に取った。(立ち読み)


すごい本だ。

ものすごいテーマだ。

思わず、動きが止まってしまって、目を真ん丸くしてしまった。



絵がきれいだ。

とてもやわらかいスケッチのような色合い。表情がまっすぐ伝わってくる、すごく優しい絵だ。
でも、描いていることは、ものすごく辛いテーマだ。


ヘンリー・ブラウンは、小さな子ども。
奴隷として売られてきた。

やがて成長して結婚を許され、同じ奴隷の女性と夫婦になり子どもをもうけるものの、主人の経済的都合から妻と子は売り飛ばされる。
ヘンリーは、反奴隷派の白人の助けを借りて、南部から秘密組織「地下鉄道」の手により木箱の小包に身を隠して北部へ脱出する。


そういうストーリーだ。


こんなテーマを絵本にするなんてとても大きなことだ。
きっと、賛否両論、たくさんの批判にさらされたことだろう。


たしかに、このような重いテーマを伝えるのは難しい。でも、いまの欧米、とくに米国はこのような奴隷制の歴史を忘れたかのように振る舞いがちだ。アフリカとの関係がギクシャクするのも、この点だ。

(米国の態度は有名。でも、オバマ大統領でどう変わるか、というところか)


これを日本語に訳すこともまた、難しいと思う。
黒人をほとんど見たこともない日本の子どもたちが、どこまでわかるだろうか。
この絵本を読んだら、黒い人は皆奴隷だと思ってしまわないだろうか。差別を助長することにもなったりして。現代のことと混同してしまうとか。
そんなことも頭をよぎった。

わたしも子どものころ、アメリカの小学校の図書館で、日本の江戸時代を描いた子供向けの絵本を発見して、そこに「これは昔のこと」と一言も書いていなかったので驚愕したことをよく覚えている。もちろんアメリカの子どもたちは、その絵本を現代の日本を描いたものと信じて疑っていなかった。



親もまた、どこまでこのような絵本を理解できるだろう。


それでも、このような本を日本語で出すことは、基本的には賛成だ。
ものごとには、きちんと向き合っていかなければならないからだ。アフリカの動物の絵本ばかりではダメだ。
人間の歴史。これを伝えていかなければ。

そこにゆがみはあったにせよ、やはり逃げずに批判ばかりせずに、少しずつ修正しながら向き合って歩み寄るしかないのだ。




自分、絵本が好きだったことをちょっと忘れていた。



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