ムガベを悪者にすれば、すべてが片付くかのような寝ぼけたことをぬかしている人間が多すぎる。

日本の某新聞社よ。いきなり「悪政」はないだろうよ。いきなり「独裁」はないだろうよ。

いや、悪政であり独裁かもしれない。
では、欧米諸国は?正義の味方ですか?
このジンバブエの抱える深刻な事態に、何の関与もしていない「いい者」なのですか?ジンバブエ政府だけが、悪者ですか?

悪者に罰=制裁を与えて、解決すると思うのですか?


米国フレーザー国務次官補もライス国務長官も、ジンバブエ政府与野党の9月の連立政権合意は認めないと言った。まるでジンバブエが悪魔の国家であるかのように。

もちろん、ジンバブエ政府の政策はありえないほどむごい。
どれだけ多くの人が、この政治的混乱の犠牲となっただろう。数百万が国を出て、数百万が食糧援助を必要としている。職を失い、医療は機能しなくなり、教育はストップ、インフラも機能せずに都市部ではコレラが流行した。死者は1200人以上を数えるというのが国連の見方だ。
これは、ジンバブエ政府がやったことだ。

そしていまなお、多くの活動家が行方不明になっている。人権団体が警鐘を鳴らしている。


だからこそ、この状況はとても怖い。
ムガベだけがこのすべての元凶であるとしたら、これまでの歴史はなんだったのか。

英国植民地ローデシアとして、豊かな農業国として成長したジンバブエ経済は、アフリカのブレッドバスケットとして国を押し上げた。多くの人が、アパルトヘイトに苦しむ南アから移住してきて、白人大農場が肥沃な土地のほとんどを占めた。
黒人小農たちは、痩せた小さな土地に押し込められた。

人々の期待を背負った国の独立。「大きな石の家」という意味を持つジンバブエという国は、なによりもまず土地問題を解決せねばならなかった。
だが、政府高官の富裕化、英国政権が交代し、独立当初に約束された土地問題への支援がなくなった。

極端なナショナリズムは、やがて土地の強制収容と占拠へとつながる。

豊かな農地からは、たくさんのタバコなどの農産物が取れる。
英国系の企業などは、ここから多くの利益を取っている。だから、ジンバブエ農業がだめになると、困る。

ムガベを悪者にするのは実に簡単だ。


ムガベは、もう84歳のじいちゃんだ。
激しい言葉遣いで、英米を罵る。
ジンバブエを我が物だと語る。コレラの問題はないと言う。

英米は、ネオコロニアリズムであると罵る。
違法な政権交代を力で推し進めようとしている英米に屈するものかと、国民を煽る。
(ただし、一部の既得権益にすがる政府高官を除き、どこまでの人間が心から昔の独立の英雄ロバート・ムガベを信じているだろうかは、もちろん大いに疑問だ。そこにあるのは、抑圧であり、脅迫だ)


歴史が複雑に絡み合って、いまの問題が出ている。

多くの人が死んでいる。


経済制裁をしたところで、公の場で罵ったところで、罵り返されるだけなのではないだろうか。そして、ますますますますますます頑なな態度をとられてしまうだけなのではないだろうか。


安易に、「独裁」だ「悪政」だなどと言うな。

あのジンバブエ与党が、連立政権合意に署名したからといって「独裁政権終焉!」などと言うな。
あの、ZANU-PFですよ?わかってないんじゃないの?


言いたいことは、それだけだ。



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